公認会計士 中田博文のブログ

M&Aの財務税務DDと価値評価を考えながら整理していきます。

ベンチャーファイナンス(2)

優先株式のメリット

<前提条件>

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種類株式の価値算定の考え方

  • 種類株式と普通株式とでは発行目的や発行先が異なり、何より付与されている権利内容が異なるために別個の価格体系が存在する。
  • 米国では、従来より、普通株式の評価を直近の種類株式の発行価格の10分の1とする慣習があった(いわゆる10倍ルール)が、これに対して、ストックオプションの発行時の普通株式の評価につき、合理的に説明可能な評価手法の確立が必要と考えられるようになり、2004年、米国公認会計士協会がPractice Aid “ Valuation of Privately-Held-Company Equity Series Issued as Compensation”(以下「実務対応報告」)を公表した。

評価対象となる権利内容

  • 実務対応報告によると、種類株主に付与される権利は、「経済的に有利な権利」と「企業とコントロールできる権利」の二つである。
  • 権利内容の価値が客観的に測定可能なものとしては、配当優先株、流動化事象に関する優先権、転換権、希薄化防止条項となっており、各株式の価格を算定する際にそれらの権利の価値が株式間の価格差に影響を与えていると考えられる。
  • 一方、その他の権利については、その価値の測定が困難であり、企業価値の配分において明示的に考慮されることはないと考えられる。

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優先株式及び普通株式の評価手法

ベンチャー企業の発行する優先株式のように、IPOM&Aで資金回収が予定される優先株式に関して、一般的に普及した評価モデル及び会計基準等は、国内において存在しない。

そのため、実務上は、2004年4月に米国公認会計士協会(以下、「AICPA」が公表した、Practice Aid “Valuation of Privately-Held=Company Equity Securities Issued as Compensation”(以下「実務対応報告」))に記載された評価手法を使用することが多い。

下図は、実務対応報告に記載された評価手法を示している。

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参考文献