PPAの関与者間の関係
業務の外部委託
- PPA業務は専門性の高い業務であるため、PPA支援業務を外部に委託する
- M&Aの買い手企業の会計監査人は監査の独立性の観点から、評価業務を実施することができない。
- そのため、買い手企業は会計監査人以外の評価専門家に依頼することになる。
会計監査人
- 監査を実施する会計監査人側は、無形資産に関する専門知識を有する会計監査人の所属するグループ企業に、無形資産の評価結果のレビューを依頼する。
PPAのタイミング
ポストPPA (必須)
- 企業結合日以降一年以内に完了することが求められている。(企業結合会計基準28項)
- PPAの評価対象となる資産・負債が多ければ多いほど、PPA報告書の作成に費用と時間を要する。
- さらに、PPAの評価結果は見積もりの要素を多く含むため、それを検証する監査手続きに比較的多くの時間が必要になるケースが多い。
- そのため、タイムスケジュールを検討する際には、事前に評価者、監査法人と事前に協議して、監査手続きに要する時間を踏まえた上で、スケジューリングを組むことが必要である。
プレPPA (任意)
- クロージング前に、ポストPPAにおいて識別される将来の無形資産の償却負担を把握するために、無形固定資産を評価する。
- 無形資産の識別、測定をするための十分な情報が入手できない場合が多い。
- その結果、ポストPPAの結果と異なる可能性があるため、あくまでも簡易的な評価として位置づけるべき。
ベンチャーファイナンス(3)
アプローチの選択
実務対応報告では、以下の2つのアプローチが記載されている。
株式価値の配分方法の選択
a.現状価値法(“the current-value method”)
b.オプション価格法(“the option-pricing method”)
c.確率加重期待リターン法(“the probability-weighted expected return method”)
d.ハイブリット法(“hybrid method”)
参考文献
ベンチャーファイナンス(2)
優先株式のメリット
<前提条件>
種類株式の価値算定の考え方
- 種類株式と普通株式とでは発行目的や発行先が異なり、何より付与されている権利内容が異なるために別個の価格体系が存在する。
- 米国では、従来より、普通株式の評価を直近の種類株式の発行価格の10分の1とする慣習があった(いわゆる10倍ルール)が、これに対して、ストックオプションの発行時の普通株式の評価につき、合理的に説明可能な評価手法の確立が必要と考えられるようになり、2004年、米国公認会計士協会がPractice Aid “ Valuation of Privately-Held-Company Equity Series Issued as Compensation”(以下「実務対応報告」)を公表した。
評価対象となる権利内容
- 実務対応報告によると、種類株主に付与される権利は、「経済的に有利な権利」と「企業とコントロールできる権利」の二つである。
- 権利内容の価値が客観的に測定可能なものとしては、配当優先株、流動化事象に関する優先権、転換権、希薄化防止条項となっており、各株式の価格を算定する際にそれらの権利の価値が株式間の価格差に影響を与えていると考えられる。
- 一方、その他の権利については、その価値の測定が困難であり、企業価値の配分において明示的に考慮されることはないと考えられる。
ベンチャー企業の発行する優先株式のように、IPOやM&Aで資金回収が予定される優先株式に関して、一般的に普及した評価モデル及び会計基準等は、国内において存在しない。
そのため、実務上は、2004年4月に米国公認会計士協会(以下、「AICPA」が公表した、Practice Aid “Valuation of Privately-Held=Company Equity Securities Issued as Compensation”(以下「実務対応報告」))に記載された評価手法を使用することが多い。
下図は、実務対応報告に記載された評価手法を示している。
参考文献